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ステンレス鋼の特性・性能

ステンレス鋼とは、JISでSUS(Steel Special Use Stainless)と定義され、「耐食性を向上させる目的で、鉄を主成分としてCrやNiを含有させた合金鋼で、一般的にはC含有量が1.2%以下、Cr含有量が10.5%以上の合金鋼」をいいます。
ステンレス鋼の優れた耐食性は、表面に形成される「不動態皮膜」によって与えられます。この皮膜は、10〜30Åの均一で薄い化学的に安定した酸化皮膜であり、表面キズなどにより破壊されてもすぐに修復される利点を持っています。
ステンレス鋼の優れた耐食性の源である不動態皮膜も長期間、特殊な環境下に置かれると腐食する事があります。水槽環境下で起こりうる腐食として(1)孔食(2)隙間腐食(3)応力腐食割れがあります。これらの対応策としては、それに適した対策鋼種を選択する必要があります。水槽に使用する主な鋼種としては、SUS304,SUS316,SUS444,SUS329J4Lがあります。これらの鋼種の化学成分、機械的性質、物理的性質を下記に示します。


●化学成分(%)●
鋼種\成分 C
(炭素)
Si
(ケイ素)
Mn
(マンガン)
Ni
(ニッケル)
Cr
(クロム)
Mo
(モリプデン)
備考
SUS304 ≦0.08 ≦1.00 ≦2.00 8.00〜10.50 18.00〜20.00 - オーステ
ナイト系
SUS316 ≦0.08 ≦1.00 ≦2.00 10.00〜14.00 16.00〜18.00 2.00〜3.00 オーステ
ナイト系
SUS444 ≦0.025 ≦1.00 ≦1.00 - 17.00〜20.00 1.75〜2.50 フェライト系
SUS329J4L ≦0.03 ≦1.00 ≦1.50 5.50〜7.50 24.00〜26.00 2.50〜3.50 二相系

●ステンレス鋼の合金成分の役割●
1. 不動態皮膜の生成し易さ、及び安定性に対して有効なもの   Cr, Mo, Nb, Ni
2. 不動態皮膜の局部補修能力に対して有効なもの   Mo
3. とくに顕著な効果はみられないもの   Mn, Si
4. 阻害的要因   C, N

●機械的性質●
鋼種\特性 0.2%耐力
(N/mm2
引張強さ
(N/mm2
伸び
(%)
硬さ
(HV)
180°曲げ
(r=t)
SUS304 205以上 520以上 40以上 200以下 -
SUS316 205以上 520以上 40以上 200以下 -
SUS444 245以上 412以上 20以 230以下 割れなし
SUS329J4L 450以上 620以上 18以上 320以下

●物理的性質●

特徴\鋼種 SUS304 SUS316 SUS444 SUS329J4L
密度(g/cm3 7.93 7.98 7.75 7.80
縦弾性係数(×104 N/mm2 19.3 19.3 20.0 19.6
比熱(J/(g・k)) 0.59 0.59 0.46 0.50
熱伝導率(W/(m・k)) 16.7 16.7 26.0 20.9
熱膨張係数(×10-6/℃)
常温〜200℃
17.6 16.1 10.6 10.5
固有電気抵抗(μΩ・cm) 72.0 74.0 60.0 79.0
融点(℃) 1,400〜1,450 1,371〜1,400 1,430〜1,510 1,420〜1,462
磁性 非磁性 非磁性 強磁性 磁性